今日、支部の司法書士と話していたときに、包括委任状の話しが出たので包括委任状のことでも書いてみます。

金融機関の抵当権設定や合併による移転、根抵当権の設定や変更や合併による移転。
これらの登記を受託するときに、包括委任状を渡されることがありますよね。
委任状に関しては、登記研究第788号(平成25年10月号)の「実務の視点」に、以下の記述があります。

ところで,登記を任意代理によって申請する場合の代理権限証明情報としては,通常,委任状が提供されるが,登記の申請に係る委任の要件として,不動産登記法上明確な規定はなく,また,民法の委任の規定(民法643条以下)においても,個別具体的な委任事務の内容を詳細に取り決めなければ,委任契約自体が成立しないとは規定されていない。
しかしながら,登記官は,この委任状により委任内容を審査するのであるから,登記実務上は,不動産取引の安全等を図るため,委任状には,登記申請に係る委任があったこと及びその内容が明らかにされている記載を求める取扱いがされており,委任者及び受任者の住所・氏名の表示のほか,委任事項を明らかにするために,申請すべき登記事項及び申請の目的である不動産の表示が記載されていなければならないものと解される。


同様の内容は、登記研究第414号の先例解説(74ページ)にも記述があります。
また、上記の続きとして、以下の記述もあります。

ただし,登記原因証明情報を提供して登記の申請をする場合に提供する委任状については,委任事項として,例えば,「登記原因証明情報である平成何年何月何日付け抵当権設定契約書記載のとおりの抵当権設定の登記を申請する一切の件」と記載すれば,別途,申請すべき登記事項及び申請の目的である不動産の表示が記載されていなくても差し支えないものとされている(昭和39年8月24日付け民事甲第2864号民事局長通達)。

この場合でも、登記原因証明情報を介して、委任事項が個別具体的になると言うことですよね。

では、なんで個別具体的ではない内容の包括委任状を登記申請に利用することができるのか?ですが、これは先例で認められているからです。
主な包括委任状に関する先例は、平成15年3月26日法務省民二第873号(三井住友銀行)や、平成19年3月28日法務省民二第788号(住宅金融支援機構)などがあります。
つまり逆に言うと、先例で認められていない包括委任状は登記申請に利用できないことになります。

ここでまた面倒なのがローカルルールです。
私もよく登記申請をする千葉地方法務局。
千葉県に本店がある、3つの銀行の登記申請をしたことがあります。

3行とも代表取締役からの包括委任状と、支店長からの委任状で登記申請をします。
当然ですが、先例で認められている包括委任状ではありません。
でも、登記ができてしまうのが千葉のローカルルールです。

この3行の中の一つの銀行は、東京都内にも支店が結構あります。
私も、この銀行の(根)抵当権設定登記を東京法務局にすることがあります。
この辺、銀行の担当者も承知しているようで、物件が都内の場合は、包括委任状ではなく代表取締役からの委任状なんですよね。

そんなわけで、包括委任状は、ごく限られた範囲でしか使えないと言うことを認識しておく必要がありますよね。