12年前の記事をほぼそのままもう一度掲載してみます。

よく、司法書士同士の会話で「嘱託登記の場合は、原則として登記識別情報は不通知なんだよね。」って話しを聞きます。
う〜ん・・ホントにそうなんでしょうかね?
ってことで、チョットその辺を紐解いてみます。

【不動産登記法】
(登記識別情報の通知)
第二十一条
  登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。ただし、当該申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は、この限りでない。

不動産登記法の上記規定によると、原則として通知をしなければならないが、例外として不通知の申し出が有った場合や省令で定めがある場合には通知をしないと定められています。

【不動産登記規則】
(登記識別情報の通知を要しない場合)
第六十四条
  法第二十一条 ただし書の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一  法第二十一条 本文の規定により登記識別情報の通知を受けるべき者があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合(官庁又は公署が登記権利者のために登記の嘱託をした場合において、当該官庁又は公署が当該登記権利者の申出に基づいて登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をしたときを含む。)
二  法第二十一条 本文の規定により登記識別情報の通知を受けるべき者(第六十三条第一項第一号に定める方法によって通知を受けるべきものに限る。)が、登記官の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに登記識別情報が記録され、電子情報処理組織を使用して送信することが可能になった時から三十日以内に自己の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該登記識別情報を記録しない場合
三  法第二十一条 本文の規定により登記識別情報の通知を受けるべき者(第六十三条第一項第二号に定める方法によって通知を受けるべきものに限る。)が、登記完了の時から三月以内に登記識別情報を記載した書面を受領しない場合
四  法第二十一条 本文の規定により登記識別情報の通知を受けるべき者が官庁又は公署である場合(当該官庁又は公署があらかじめ登記識別情報の通知を希望する旨の申出をした場合を除く。)
2 前項第一号及び第四号の申出をするときは、その旨を申請情報の内容とするものとする。

不動産登記法の規定を受けて、省令で上記のように規定されています。
おそらく、この省令の規定が「嘱託登記の場合は、原則として登記識別情報は不通知」と言う話題の元になっているのでしょう。

確かに、第1項第4号で、通知を受けるべき者が官公署の場合は原則不要で、例外として通知を希望する旨の申し出が有った場合は通知することになっています。

 12年前に私が受託した事件は、義務者が官公署で権利者は民間のケースです。
ということで、第1項第1号括弧書きのとおり、権利者の申し出に基づいて、官公署が不通知の申し出をしない限り、原則どおり通知されます。

これは、法にも明記されています。
【不動産登記法】
(官庁又は公署の嘱託による登記の登記識別情報)
第百十七条
  登記官は、官庁又は公署が登記権利者(登記をすることによって登記名義人となる者に限る。以下この条において同じ。)のためにした登記の嘱託に基づいて登記を完了したときは、速やかに、当該登記権利者のために登記識別情報を当該官庁又は公署に通知しなければならない。
2 前項の規定により登記識別情報の通知を受けた官庁又は公署は、遅滞なく、これを同項の登記権利者に通知しなければならない。

上記のとおり、登記官は権利者のための登記識別情報を官公署に通知しなければことになっています。

当然12年前のケースであれば、登記嘱託者たる官公署の代理人となっておりましたので、通知を受けた上記の登記識別情報は、第2項の規定のとおり遅滞なく登記権利者に交付(通知)することになります。