先月、休眠抵当の抹消登記が完了したことを書きましたが、今月号の登記研究「実務の視点(51)」で「抵当権者の所在が知れない場合の抹消登記の申請手続」に関する記述があります。
もうチョット早い号に掲載されていれば、参考資料になったんですけどね。
掲載記事の中にも記載されていることですが、何点か思い出したことを書いてみます。

今回、利息計算以外の部分で一番厄介だったのが「登記義務者の所在が知れない」ことを証する書面です。
これには・・・
1.登記義務者が登記記録上の住所に居住していないことを市区町村長が証明した書面
2.登記義務者の登記記録上の住所に宛てた被担保債権の受領催告書が不到達であったことを証する書面
3.警察官が登記義務者の所在を調査した結果を記載した書面
4.民生委員が登記義務者がその登記記録上の住所に居住していないことを証明した書面
・・・などがあります。

上記のうち、いずれか1点を提供することで足りるものとされていますが、現実的なのは「1」か「2」ではないでしょうか?
ちなみに「2」に関しては、「配達証明付郵便によることを要する」とされています。

で、「1」または「2」を利用しようと思っても、いくつかの実例(質疑応答)が出ていまして。

法142条3項後段の規定による登記の申請の手続(登研493号)
 ○要旨 登記義務者たる抵当権者について登記簿上の住所地に住民票がない旨の市区町村長の証明書は、登記義務者の行方不明を証する書面に当たらない。
 ▽問 法142条3項後段の規定に基づく登記の申請において、登記義務者たる抵当権者が現在登記簿上の住所地に住民票のないことを市区町村長が証明した書面は、細則45条前段の登記義務者の行方の知れないことを証する書面に当たると考えますが、いかがでしょうか。
 ◇答 消極に解します。

上記は、「不在住証明書」の内容に関する物ですが、「住所地に住民票のないことを証明します」とか「住民票に記載がない旨を証明します」と言う内容の証明書は、登記義務者の行方不明を証する書面にはならないと言うことですね。
つまり、「住民票が存在しない=そこに住んでいない」と言うことにはなりません。
登記義務者の行方不明を証する書面とするには、「住所地に居住していないことを証明します」と言う内容でなければならないようです。

実は、今回私が取得した不在住証明書も「住所地に住民票のないことを証明します」と言う内容でしたので、登記義務者の行方不明を証する書面にはなりませんでした。
このような質疑応答が出るぐらいですから、「住所地に住民票のないことを証明します」と言う証明の市区町村は多いのではないかと思います。

休眠担保権抹消の場合の行方不明を証する書面(登研560号)
 ○要旨 休眠担保権の抹消登記の申請書に添付する受領催告書の差出人は、登記申請の代理人でも差し支えない。
 ▽問 いわゆる休眠担保権の登記の抹消の申請書に添付する登記義務者の行方不明を証する書面は、被担保債権の受領催告書が不到達であったことを証する書面で差し支えないこととされています(昭和63年7月1日民三第3456号民事局長通達第3の4)が、受領催告書を郵送する際の差出人は、登記申請の代理人でも差し支えないと考えますが、いかがでしょうか。
 ◇答 御意見のとおりと考えます。

上記は、申請代理人であれば一切の権限を委任されているのが通常なので、抹消登記の前提となる受領催告書の郵送に関しても委任事項に含まれていると考えられるからです。
本人宛てに戻って来て、それをまた受け取るとなると面倒ですからね。
今回は、私が代理人となり発送をしました。

休眠担保権を抹消する場合における登記義務者の行方不明を証する書面(登研539号)
 ○要旨 「受取拒否」の付せんを付して返送された配達証明付郵便は、登記義務者の行方不明を証する書面とならない。
 ▽問 休眠担保権を抹消する場合において、登記義務者に発送した配達証明付郵便(ハガキ)が、登記義務者の相続人が自己の関知しないことであるとしてこれを受領しなかったため、「受取拒否」の付せんが付されて返送されてきたときには、これをもって登記義務者の行方不明を証する書面として使用できるものと考えますが、いかがでしょうか。
 ◇答 消極に解します。

上記のとおり、「受取拒否」が理由で返送された配達証明付郵便は、登記義務者の行方不明を証する書面となりません。
拒否をしたということは、本人や相続人が存在している可能性があるので、「登記義務者の所在が知れない」とは言えないというのが理由です。

返送された配達証明付郵便に、「あて所に尋ねあたりません」と言うスタンプが押されていれば登記義務者の行方不明を証する書面となることは当然ですが、その他にも「あて名不完全で配達できません」と言うスタンプでも利用することができます。
この、「あて所に尋ねあたりません」や「あて名不完全で配達できません」の意味に関しては、日本郵便のサイトに掲載されています。→主な返還理由

そんな感じで何かと面倒な休眠担保の抹消ですが、一度受託すると手続きの流れがつかめるので、次回からはやりやすくなるのではないでしょうか?